設立15周年、NPO法人全国G空間情報技術研究会の歩みとこれから(第3回)

 

設立15周年、NPO法人全国G空間情報技術研究会の歩みとこれから

第3回  NPO法人全国G空間情報技術研究会のこれからの活動と方向性

NPO法人全国G空間情報技術研究会  理事長 碓井照子

 第4次産業革命とは、一般的にはIoT、AI、ビッグデータがキーワードであるが、重要な事はサイバー空間と実空間が同期するSociety5.0の社会の実現にある。サイバー空間とは、いわゆる電子国土づくりのことを意味する。我が、NPOのメンバーの多くが、地方を拠点とする測量設計業者である。「測る」ことと「設計」業務を生業としていた企業にこの15年間、GIS業務が追加されてきた。GISソフトを使いこなすことにより業務の効率化とサービスの差別化・多角化を実現してきたのである。具体的には、測量したデータを加工し、地図として視覚化することによりGISでプレゼンをし、国や地方自治体の地図作成業務も受注できるようになった。各種台帳とその付図の電子化とGISシステム化の受注である。後者は、大手航測会社には及ばず、その実績はさほど多くないかもしれない。しかし、自治体GIS推進の一翼を担ってきたことは確実である。専門のGISソフトを活用して、個別GISとして地方自治体へ納品したケースもあるが、多くは台帳と附図の視覚化システムとして地理院地図(旧電子国土システム)を活用し、地方自治体へ提供してきた。

自治体GISの大縮尺レベルの道路台帳附図や都市計画附図などの公共測量成果から基盤地図情報は整備されている。国土の基盤になりうる品質保証は、公共測量成果であることに起因する。国土の位置の基準である基盤地図情報の重要性を身をもって感じてきたともいえる。地方自治体の台帳と附図の電子化が、基盤地図情報の整備・更新にリンクされる基盤地図情報のスパイラルアップは、地方の測量設計業者が、その一翼を担わなければならない。このことは、サイバー国土(電子国土)時代になればなるほど重要である。NPO活動のこれからを考えるとき、やはり、国土の位置の基盤づくりに携わることは、測量設計業者の使命であろう。まずは、地方自治体に すべての測量において品質が重要であり、公共測量成果の重要性を伝え、台帳附図の電子化を商いとしながら基盤地図情報の重要性を地方自治体に説明し、少なくとも農山村地域の基盤地図情報を2500レベルにし、スバイラルアップ更新を実現する活動を継続する必要があろう。

また、UAVによる3次元計測の技術力と準天頂衛星の測位の技術力をつけ、i-Constructionの測量⁺設計とGISによる建設情報の管理分野でもビジネスを展開しなければならない。特に人口5万人以下の小規模自治体では、自治体GISも稼働していない。中山間地域の小規模な地方自治体には、地元企業として台帳附図の電子化と自治体GISの導入に寄与しなければならないといえる。農業ITが進展する中、準天頂衛星による測位やUAVによる計測は増加するであろう。農業ITの中で、精密な電子地図は不可欠のものとなる。工事測量だけでなく、農山村地域の3次元測量データ作成もビジネスとして増加するであろう。災害時の被災データの収集にも社会貢献ができる。常に、重要な事は、これらの3次元測量・測位データを電子国土の位置の基準である基盤地図情報の整備とスパイラルアップへと結びつけていく意識であろう。

今、一つ重要な事は、オープンデータ時代の到来にある。地方自治体のデータの約70%は、地理空間情報といわれている。G空間情報センターは、あらゆる種類の地理空間情報のハブであるから、地方自治体のオープンデータをG空間情報センターに登録する活動にも貢献せねばならない。また、オープンデータをGISで活用し、地元の住民生活の向上に資するアプリケーションの開発も重要である。

最後に、測量や測位,GISに関心のある人材を地方で養成しなければならない。2022年度から実施される高等学校での「地理総合」(必履修科目)では、地図,GISをすべての高校生が学ぶことになる。地元の人材育成に貢献するためにも学校教育をサポートする活動も必要であろう。

 

「GIS NEXT  2018.4 第63号 掲載記事より