地方における地理空間情報産業発展を目指して:国連ベクトルタイルツールキットの活用

 

地方における地理空間情報産業発展を目指して:国連ベクトルタイルツールキットの活用

日本におけるスマートシティ:スーパーシティ―政策の中でSDG'sに貢献

NPO法人全国G空間情報技術研究会 理事長 碓井照子

 今年の5月27日、「スーパーシティ」構想を実現する改正国家戦略特区法が参院本会議で可決、成立した。2030年を目途にSociety5.0(超スマート社会)の実現を図るとしている。スーパーシティとはいえ、海外のスマートシティの日本版であるが、個人情報保護の視点から反対する議員も多い。元々、気候変動から地球環境を守るために都市の省電力化や自動車による一酸化炭素排出規制による環境対策からはじまったスマートグリッドに起源があり、スマートコミュニティ、スマートシティへと発展する。センサー技術、5G、IoT、AI、ビックデータの急速なイノベーションの進展により全世界で実装されている都市も多い。むしろ、日本はこの分野では出遅れている。

 この法律を契機に地方自治体でのスマートシティ、スマートコミュニティ、スマート農業、スマート林業などすべてのスマート化が急速に進行すると考えられる。1990年代半ばから始まった平成時代の電子自治体・自治体GIS政策から令和時代のスマートシティ・コミュニテイ、日本版スマートシティ(スーパーシティ)へと進展する法的基盤である。個人情報保護とともに国家による個人の権利の統制には気をつけなければならない。しかし、スマートシティの原点にもどると、スマートシティが地球環境の保全つまり国連のSDG'sの活動としても展開できる点に注目したい。GISは、電子政府・電子自治体の形成に20世紀初頭から貢献してきた基盤技術である。重要な事は図1にも示したようにスーパーシティのインフラ情報は地理空間情報であり、住民サービスとしての地図化による情報の見える化はスマホアプリケーションにおいては必須であるという点にある。

 GISの様々な空間解析機能を使用するには、電子地図のベクトルタイル化が必要であるが、国土地理院の藤村英範氏が作成した無料の国連ベクトルタイルキット(UN Vector Tile Tool Kit:UNVT)の活用を考えている。(図2) すでに国土地理院では、このUNVTを使用した地理院タイルのベクトルサイトを運用しているが、まだその利活用はそれほど進んでいるとはいえない。国土地理院の2500レベルの電子地図は都市計画区域だけであるから農山村地域の大縮尺レベルの電子地図のベクトルタイル化は、不十分な状況である。しかし、無料のUNVTを活用し、地元市町村のオープンデータを活用すれば大縮尺レベルのベクトルタイル化も不可能なことではない。更に、我々NPOの会員は、UAVを利用して画像や点群データからの地図づくりの技術研修を重視している。この5月にUAV資格認定団体としての許可もおり、コロナ対策のため日程は定かではないが、UAV資格認定講習会を今年度から開催したいと思っている。NPO法人全国G空間情報技術研究会は、地理空間情報産業で地域の活性化を目指し、住民サービスを向上させて、さらにローカルからグローバルにSDG’sに貢献する活動を継続させたい。

 

 

図1 スーパーシティの技術仕様 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/supercity/openlabo/supercitykaisetsu.htmlより引用

 

図2 国連ベクトルタイルツールキット https://maps.gsi.go.jp/pn/meeting_partners/data/20191128/6.pdfより引用    

 

「GIS NEXT  第72号 掲載記事より