NPO全国G空間情報技術研究会が目指す人材育成とはなにか

NPO全国G空間情報技術研究会が目指す人材育成とはなにか

―オンライン技術セミナー開催と津山市における地域防災支援活動―

NPO法人全国G空間情報技術研究会理事長  碓井照子

                                       

 NPO全国G空間情報技術研究会には、全国セミナー以外にも各支部が実施する技術セミナーも多く、会員なら自由に参加できる。コロナ禍の中、Web研修会形式が普及し、支部会員だけでなく全国から他支部会員の参加も増加しており、満足度も向上している。交通費がかからないゆえに気軽に参加できるのがその利点といえよう。技術セミナーは、ほとんど毎月どこかの支部で開催されており、8月以降でも19日には第2回全国スキルアップWebセミナー、9月には関東中部主催(9月7日)と全国G空間情報技術研究会主催(9月24日)と2回開催されている。会員の技術力UPに最も力を入れており、そのことが我々NPOの特徴でもある。特に、測量やGISにおける新技術力向上と、地域企業として地理空間情報技術を活用し地元サービスができるか、そのための安全な地域社会づくりに貢献できる人材の育成を重視しているのである。その事例が、9月7日の「国土地理院技術セミナー」と、7月28日の山陽新聞に掲載された「津山市の地域防災支援活動」にみられる。

   9月7日に実施した「国土地理院技術セミナー」(関東中部支部主催)では、国土地理院の応用地理部 地理調査課 課長 齋藤俊信様より「防災・減災に役立つ地理空間情報」、企画部 技術管理課 課長補佐 岩田和美様より「公共測量作業規程の準則 解説-三次元点群測量、地上レーザ測量およびUAV 写真測量、GNSS 測量機を用いた3 級水準測量など」について、講演をしていただいた。

   岩田様の講演は、我々NPOが技術力を急速に向上させているUAV3次元点群測量など、i-Constructionにおける工事測量の劇的な技術変化を公共測量作業規定として実務に役立てるためである。また齋藤様の講演は、地理院地図を活用し、防災・減災に必要な地形判読の技術力向上のために不可欠の知識と言える。測量技術者が地理空間情報技術者へ成長していくには、最新の測量技術をマスターしただけでは不十分である。地理院地図を活用して地形判読をし、災害に脆弱な地域を住民にわかりやすく説明し、居住地域の災害危険度を理解してもらう技術力育成が必要である。そのために、地図から地形判読ができ、地理院地図を活用して、Webでわかりやすく、プレゼンテーションできる知識とスキルが必要なのである。そして、もう一つ必要なのが行政との連携である。防災などにおいては特に行政との連携が不可欠と言える。 

   昨年7月20日に我々NPOと津山市で協定した「災害時における無人航空機(UAV)の活用に関する協定」のもとに、今年の7月26日、中四国G空間情報技術研究会の会員企業である株式会社シデック(土井良浩中四国G空間情報技術研究会支部長)が、津山市危機管理室、津山圏域消防組合、津山警察署、美作県民局の30人の参加を受けて、模擬の土砂災害現場の状況をUAVで撮影し、災害状況を共有化する防災訓練を津山市で実施した。(写真) この取り組みの次の段階は、地理院地図の防災地理情報(地形特性情報や災害履歴情報など)を活用し、津山市と連携して住民避難対策の防災電子地図を作成、地理院地図上で誰もがスマホで見られる環境づくりである。特に2022年度からは、高校の必履修科目として「地理総合」が始まり、地理院地図を活用した身近な地域の防災教育が始まるからである。

 

「GIS NEXT    第77号  掲載記事より」