第4期「地理空間情報活用推進基本計画」とNPO法人全国G空間情報技術研究会の活動

第4期「地理空間情報活用推進基本計画」とNPO法人全国G空間情報技術研究会の活動

 

NPO法人全国G空間情報技術研究会理事長  碓井照子

                                       

   3月18日、第4期の「地理空間情報活用推進基本計画」が内閣府から公表された。第4期では、①自然災害や地球規模の環境問題への対応、②デジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性向上、③豊かな暮らしのための多様なサービスの創出、を3本柱として基本計画が策定されている。

   地方の中小測量設計業者が多い我々のNPOでは、第4期の基本計画の中で、『【第Ⅱ部第1節自然災害・環境問題への対応(1)統合型G空間防災・減災システムの構築の推進】』は、非常に関係が深い。この取り組みにおいて、『① 発災前における地理空間情報を活用した災害対応力強化のための取組 a)ハザードマップ等の地域の災害リスク情報等の充実、活用促進』は地元の測量設計業者が貢献できる分野である。また、『令和8年度までに約17,000の洪水浸水想定区域図データの整備』、『災害リスク情報を用いた様々な分析が可能となるようGISデータによる提供を進めるとともに、土地の改変状況や過去の災害履歴等を地理空間情報として整備・提供』などは、地元の防災支援を地域貢献活動と考えている我々のNPOにとって、災害履歴の地理空間情報としての整備等はすでに実戦力のある分野でもある。さらなる知識の習得と技術力向上に取り組む必要がある。また大学の研究者とも連携して自然災害リスクの判読技術を向上させる必要も考えられる。

   『災害復旧の迅速化に資するよう、土地境界等を明確にしておく地籍整備を推進』は、早くより地籍GISに貢献してきた我々NPOの得意とする分野である。

   『発災時における地理空間情報を活用した災害対応力強化のための取組 a)災害情報の早期把握 』については、地元地域との災害協定を結んできている我々NPOの社会的使命と考えており、すでに津山市とは発災直後にUAVを活用して被害情報を収集し、リアルタイムで地方自治体災害本部と連携する災害協定を締結している。

   また『官民の様々な地図サービス等の基盤となる情報としてベース・レジストリにも指定されている電子国土基本図について、電子地図上の位置の基準である基盤地図情報を含む地図情報や正射画像(オルソ画像)、地名情報等の継続的な整備・更新を行うとともに、多言語化・精緻化・3次元化等の高度化を図る。』については、2014年から神奈川県寒川町都市計画課に電子国土Webの時代から地理院地図の活用へと継続的にWebマップを作成し、住民サービスをサポートしている。2019年には地方自治体における固定資産税課の家屋データを活用した基盤地図情報の随時更新手法を「寒川モデル」として実践し、一定の成果を上げてきた。

   さらに地理院地図Vectorと地方自治体の多様な地図をタイル化して重ね合わせ、WebマップあるいはWebGISで住民サービスを向上させるため、国連ベクトルキットを活用した地図タイル化操作技術の研修に取り組み始めた。3次元高度化においても2020年にUAV操作の指導団体としての指定を受け、全国の支部会員への啓蒙や研修を実施しており、UAVによる3次元レーザー測量に関してもかなりの技術力を高めてきている。

 『【2.産業・経済の活性化】 (1)デジタルトランスフォーメーションによる生産性向上・業務効率化』は、工事測量・設計業を生業とする我々NPOの会員企業にとって最も急ぐべき課題である。建設生産プロセス(調査・測量、設計、施工、検査、維持管理・更新)でICT、3次元データ等を活用することはもちろん、3次元成果物納品要領を深く理解しなければならない。国土交通省は、2023年までにBIM/CIMを小規模工事を除くすべての公共工事に導入するとしており、あまり時間がない。TINを含む3次元モデル、LOD別BIM/CIMモデル作成やLAND-XML形式出力の理解、BIM/CIM/GIS技術力向上が責務である。2022年度は、国土交通省の「BIM/CIM活用ガイドライン案」をテキストに2022年度中に4回以上の技術研修会を計画している。

   2020年のベースレジストリーロードマップ案では2025年までにベースレジストリーを整備するとしている。基盤地図情報から作成される電子国土基本図や、住所・地番データもベースレジストリーである。このデータの整備は、地理空間情報技術の根底にあるベースデータであるゆえに、2022年から2025年までには、地理空間情報社会の基盤が完成する。我々のNPOは、地方に拠点を置き、この技術革命の時代に地方のIT化に地元力で貢献したい。

 

「GIS NEXT    第79号  掲載記事より」